10. オンライン英会話スクールへの事業構造改革のAtlas提案

2013年に自民党が政権を握り、アベノミクスによって景気回復の兆しが見えてきたとはいえ、依然として英会話スウールは厳しい状況が続いている。2012年の決算によれば、高い収益力を持つベルリッツやECC、GABA-COCO塾(ニチイ学館)さえも株式上場以来の減収減益となった。

この状況について業界では、「オンライン化による構造不況」と「マンツーマンレッスン形式の台頭」と見ているようである。すなわち、Atlasマンツーマン英会話やレアジョブ、English Village、ぐんぐん英会話など安価な新興業態の台頭で、大手スクールの「グループレッスンでネイティブスピーカー」という従来の魅力が色あせ、ターミナル駅前に教室を進めた大手英会話スクールがいつのまにか構造不況に陥ったということである。私も同感である。

このように構造不況に陥っている日本の大手スクールが、今後どのような方向に向かって立ち直っていくことができるのか、その手掛かりが会員制語学スクールの仕組みにあると考えている。それでは、これまでに書いてきた会員制語学スクールのどのような点がてがかりになるのか。

手掛かりは、既存の語学スクール業態を3つの切り口で分類すると見えてくる。それは「業界」「言語コース数」「価格」を絞るか絞らないかということである。これらはことさら新しいことではない。自分が通いたい英会話スクールを選ぶときに誰でも気づく基本的な切り口のことである。

まず、最初の選択は業界を絞れば生徒に専門性を与えることはできるが、総合性という面ではマイナスである。このどちらをとるかということである。業界を絞ったのは、昔からある「グループレッスン形式」「TOEICやTOEFL専門校」「英語以外の外国語専門校」などである。業界を絞らないのが、「会員制語学スクール」「フィリピン&Skype」である。

次の選択は言語コース数を絞るか絞らないかである。言語コース数を絞れば、生徒にとって選択の幅は狭まるが、絞り方が的を射てれば選択が簡単で「英語以外で学んでみたい言語がある」ということになる。

一方、言語コース数を絞らなければ、選択の幅は広がるが、「いろいろな言語があるが、本当に学びたい言葉がない」という結果になりかねない。現在、大手英会話スクールやフィリピンSkypeスクールが直面している問題はここにある。

もう一つの選択は価格を下げるか下げないかである。価格を下げれば生徒は満足するが、価格を下げなければ生徒は満足しない。極めて単純な心理である。価格を下げなくても、付加価値が高ければ売れるという考え方もできるが、現代では、よほど高い付加価値がなければ売れない。それが「時間」であり、「ブランド」である。

さて、このように業界、言語コース数、価格の3つの切り口で英会話スクールを分類していけば、単純な傾向が見えてくる。「業界を絞る」「言語コース数を絞る」「価格を下げる」の3つの切り口のうち、2つ以上イエスの業態が元気のいい業態となる。会員制語学スクールのみがこれに分類される。

逆に、2つ以上ノーの業態が構造不況に陥っている業態である。大手英会話スクールのベルリッツ、ECC、GABA-COCO塾、シェーン、NOVA、レアジョブ、ぐんぐん英会話がこれに分類される。


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